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京都地方裁判所 昭和49年(ワ)1168号 判決 1980年8月19日

原告

浦田猛

被告

日本生命保険相互会社

ほか三名

主文

被告らは原告に対し各自金八九二万九七〇二円及び内金二〇〇万円にて昭和四六年六月一六日より、内金八〇万円について昭和五五年八月二〇日より各支払ずみに至るまで年五分の割合による金員を支払え。

原告のその余の請求を棄却する。

訴訟費用はこれを六分しその五を原告の負担としその一を被告らの負担とする。

この判決は仮に執行することができる。

ただし、被告らは各金四〇〇万円の担保を供するときは右仮執行を免れることができる。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

1  被告らは原告に対し各自七四三七万四九四九円及び内二〇〇万円について昭和四六年六月一六日より、内二〇〇万円について昭和五五年八月二〇日より各支払ずみに至るまで年五分の割合による金員を支払え。

2  訴訟費用は被告らの負担とする。

3  仮執行宣言

二  請求の趣旨に対する答弁

(被告ら)

1 原告の請求を棄却する。

2 訴訟費用は原告の負担とする。

(被告昭光自動車株式会社、同高田裕弘)

仮執行免脱の宣言

第二当事者の主張

一  請求原因

1  事故の発生

原告は次の交通事故によつて傷害を受けた。

(一) 発生時 昭和四六年六月一五日午後八時三〇分頃

(二) 発生地 大阪府吹田市垂水町三丁目二五番地交差点路上

(三) 加害車 久田車―普通乗用自動車(京五五す四七七一号)、運転者被告久田八光。

高田車―普通乗用自動車(大阪四り七三九二号)、運転者被告高田裕弘。

(四) 態様 原告同乗の右久田車と高田車が衝突。

2  原告の傷害の部位程度と後遺症

(一) 原告は、右交通事故によつて外傷性頸部症候群等の傷害を負い、頸・肩・背・腰各部痛、頭痛、右上下肢痛、運動機能障害、眼痛流涙、性機能不全等の症状のため左記の如く入、通院した。

昭和四六年六月一六日から同月一八日まで末原外科に入院。

昭和四六年六月一八日から同年七月一三日までシミズ外科に入院。

昭和四六年七月一四日から同月二〇日までシミズ外科に通院。

昭和四六年七月二一日から同年一一月二七日まで桂病院に入院。

昭和四六年一一月二八日から昭和四八年二月二七日まで桂病院に通院。

昭和四八年二月二八日から昭和四九年八月三〇日まで待鳳診療所に通院。

昭和四九年八月三一日から同年九月二五日まで待鳳診療所に入院。

昭和四九年九月二五日から昭和五一年五月一日まで上京病院に入院。

昭和五一年五月二日から同年七月一六日まで鹿野温泉病院に入院。

昭和五一年七月一七日から同月一八日まで自宅療養

昭和五一年七月一九日から同月二六日まで安井病院に入院。

昭和五一年七月二七日から同年八月一九日まで安井病院に通院。

昭和五一年八月一九日から昭和五三年五月二五日まで上京病院に通院。

(二) しかし右加療後も頸・肩・背・腰各部痛、頸部・体幹部の運動機能障害が残り自賠法施行令二条別表五級該当の後遺症が残存する。

3  責任原因

(一) 被告久田八光の責任

被告久田は、久田車の保有者として同車両を自己のために使用していたものであるから自賠法三条所定の責任を、また運転中前方不注視等の過失により本件事故を惹起したものであるから不法行為責任を負う。

(二) 被告日本生命保険相互会社(以下被告日本生命という。)の責任

被告久田は被告日本生命の従業員であり同会社の職務執行中本件事故を惹起したものであるから被告日本生命は使用者責任を有する。

(三) 被告高田裕弘の責任

被告高田は高田車を運転中前方不注視等の過失により本件事故を惹起したものであるから不法行為責任を負う。

(四) 被告昭光良動車株式会社(以下被告昭光という。)の責任。

被告昭光は高田車の保有者で自己のために運行の用に供していたのであるから自賠法三条の規定に基づく賠償責任を有する。

4  損害七四三七万四九四九円

(一) 休業損害 合計一五六七万四一八五円

原告は本件事故による負傷のため左のとおり損害を蒙つた。

(1) 昭和四六年六月一五日から昭和四七年九月三〇日まで一七三万二一二六円。(一日三六六二円×四七三日)

(2) 昭和四七年一〇月一日から昭和四八年一二月二一日まで二一二万五〇五〇円。(一日四六五〇円×四五七日)

(3) 昭和四九年一月一日から昭和五一年九月三〇日まで、五五一万八〇六二円。(一日八六四九円×六三八日)

(4) 昭和五一年一〇月一日から昭和五二年六月三〇日まで二八八万〇四二三円。(一日一万〇五五一円×二七三日)

(5) 昭和五二年七月一日から昭和五三年五月二〇日まで三四一万八五二四円。(一日一万〇五五一円×三二四日)

(二) 一時金四九四万円。その内訳は、昭和四六年一二月二〇万円、昭和四七年七月二三万円、昭和四七年一二月二六万円、昭和四八年七月二九万円、昭和四八年一二月三二万円、昭和四九年七月三五万円、昭和四九年一二月三八万円、昭和五〇年七月四一万円、昭和五〇年一二月四四万円、昭和五一年七月四七万円、昭和五一年一二月五〇万円、昭和五二年七月五三万円、昭和五二年一二月五六万円。

(三) 入院諸雑費五一万八〇〇〇円(四〇〇円×一二九五日(原告の入院期日))。

(四) 付添看護料三万円(一五〇〇円×二〇日)

(五) 通院費四万〇八一〇円

(六) 文書費五〇〇〇円

(七) 示談交渉等の交通費一万九五〇〇円

(八) 慰藉料三〇〇〇万円

(九) 弁護士費用二〇〇万円

(一〇) 逸失利益三八三四万三一一五円

原告の生年月日昭和一〇年八月六日、後遺障害五級、労働能力喪失率七九パーセント、就労可能年数一八年、新ホフマン式計算による係数一二、六〇三、一日賃金一万〇五五一円

10551×365×0.79×12.603=38,343,125

(一一) 損益相殺

原告は、右(一)の休業損害金一五六七万四一八五円については既に受領しているので、損害金より控除する。

5  よつて、原告は被告らに対し各自七四三七万四九四九円及び内二〇〇万円について不法行為日の翌日である昭和四六年六月一六日から、内弁護士費用二〇〇万円について本判決言渡日の翌日から各完済に至るまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。

二  請求原因に対する認否

1  (被告日本生命、同久田八光)

請求原因1記載の事実は認める。同2記載の事実は否認する。同3記載(一)(二)の各事実は認める。同4記載の事実は否認する。

2  (被告昭光自動車、同高田裕弘)

請求原因1記載の事実は認める。同2記載の事実は不知。

同3記載(三)(四)の事実中被告昭光が高田車の保有者であることは認め被告高田の過失については否認。同4記載の事実は不知。

三  被告らの抗弁

1  原告は被告日本生命らより左のとおり弁済を受けている。

(一) 自賠責保険の被害者請求により昭和四七年一月に六一万四五四六円。

(二) 昭和四六年六月一六日より昭和四九年九月三〇日までの間の労働者災害保険法による休業補償給付及び被告日本生命よりの外務職員就業規則災害補償規定による付加給付合計六二一万八三五三円。

(三) 昭和四八年八月一七日被告日本生命が支払つた損害賠償金の内金八〇万円。

(四) 昭和四九年七月一七日被告日本生命が損害賠償金の内金として支払つた一三万二二五〇円。

2  被告久田が原告を好意的に無償で同乗させていた際の事故であるから損害額の算定について参酌すべきである。

四  抗弁に対する認否

抗弁1記載の各金員の受領を認める。但し、(一)(二)の受領金は前記のとおり損益相殺済みである。

第三証拠〔略〕

理由

一  事故の発生と責任の帰属

1  被告日本生命、同久田八光

請求原因1及び3(一)(二)の事実は当事者間に争いがない。

右事実によると、被告久田は自賠法三条に基づく運行供用者として、また民法七〇九条の不法行為者として、被告日本生命は民法七一五条の使用者としてそれぞれ原告に生じた損害の賠償責任を負わなければならない。

2  被告昭光自動車、同高田裕弘

請求原因1記載の事実は当事者間に争いがなく、成立に争いのない甲第一号証と原告、被告久田八光及び被告高田裕弘の各本人尋問の結果を総合すると、事故発生場所は交通整理の行われていない交差点であること、被告高田は車を運転し南進して右交差点にさしかかつたのであるが右側は塀に遮られておりまた日没後で降雨のため右方の見通しがよくなかつたこと、同被告は交差点直前で一旦停車したが右方の安全を十分確かめないまま交差点内に進入したため交差点中央付近まで前進したとき突然久田車が東進してきているのに気付き停車の措置をとる余猶もないまま自車前部を久田車の助手席ドア辺りに衝突させたこと、久田車はその衝撃でガードレールに当り田圃へ転落しその際久田車の助手席に乗つていた原告が負傷したことを認めることができ、右認定を左右するに足りる証拠はない。右事実によると、被告高田は交差点に進入するについて右方の安全を十分確認していなかつた過失があつたものと認めることができるから同被告には原告の被つた損害について不法行為による賠償責任があるものというべきである。被告昭光が高田車の保有者で自己のために運行の用に供していたことは当事者間に争いがなく、前記認定事実を総合すると被告昭光は自陪法三条に基づき損害賠償責任を負わなければならない。

二  傷害の程度

成立に争いない甲第六、第七号証、同第一一ないし第二〇号証、同第二二ないし第二七号証、同第三六、第三七号証、乙第一ないし第九号証、証人井上スミ、同姫野純也、同佐々木良造、同柴原堯の各証言、原告、被告久田八光、同高田裕弘の各本人尋問の結果、鑑定人佐々木良造の鑑定結果及び弁論の全趣旨を総合すると次の事実を認めることができる。

原告は本件交通事故によつて全身を打撲し外傷性頸部症候群、腰部捻挫等の傷害を負い、その後、頸・肩・背・腰各部痛、頭痛、右上下肢痛、運動機能障害、視力低下、眼痛流涙性機能不全などの症状を訴え、左記のとおり主として愁訴に随つて継続的に治療をうけ、器質的病変、自律神経不安定症状、精神的症候の安定が計られた。(1)昭和四六年六月一五日から同月一八日まで末原外科医院に四日間入院。(2)同年六月一八日から同年七月一三日までシミズ外科医院に二六日間入院。同月一四日から同医院に通院。(3)同年七月二一日から同年一一月二七日まで桂病院に一三〇日間入院。同月二九日から昭和四七年八月一四日まで一二三回同病院に通院。(4)昭和四八年二月二三日から同四九年八月三〇日まで待鳳診療所に通院。同月三一日から同年九月二四日まで同所に二五日間入院。(5)昭和四九年九月二五日から同五一年五月二日まで五八五日間上京病院に入院。(6)同年七月一九日から同月二五日まで七日間安井病院に入院。同月二八日から同病院に通院。(7)昭和五一年七月一九日から同五三年五月二〇日まで上京病院に通院。昭和五三年五月頃治療効果が期待しえなくなり症状は固定した。

現在X線検査により変形性頸・腰椎症が、また頸部神経叢の異常に伴うとみられる四肢、右上下肢皮層知覚低下及び器質的痴呆と性格変化がみられるものの、頭蓋X線撮影、頭蓋CT検査、脳波検査等には異常は現われず他に他覚的所見もみられない。一般に中枢神経の器質的な病変は事故直後における意識喪失の時間と予後が大きい関係をもつと考えられるが原告には本件事故直後長時間意識喪失があつたということはなかつた。昭和四七年六月一三日原告は当時の担当医師井上スミから心因性症状が残るのみで症状が固定したとの診断を受けた経過がある。原告の症状には加齢的病変によるものとみられるものも認められる。なお昭和四九年八月三一日から二五日間の入院は原告が前屈姿勢をとつたときに腰部を痛めたため治療の便宜上とられた措置である。

以上の事実が認められ右認定を左右するに足りる証拠はない。

右事実と前掲証拠にあらわれた諸搬の情況とを併せ考えると、原告の訴える前記症状のうち器質的痴呆については本件事故によつて生じたものとは即断できず、その余の現在原告が訴えている諸症状はその主原因が本件交通事故にあるといえるけれども心因性要素によるものとみられるものが多くその性格に基づく精神状態が重要な影響を与えているものというべきである。

三  損害

前記事実及び各証拠と成立に争いのない甲第三、四号証及び弁論の全趣旨を総合すると次の事実を認めることができ、この認定を左右するに足りる証拠はない。

(一)  入院諸雑費

原告は前記入院に伴い諸雑費として少くとも入院期間七七七日中当初の入院の一六〇日間につき一日四〇〇円、爾余の六一七日間につき一日三〇〇円の各割合による合計二四万九一〇〇円の支払を余儀なくされた。

(二)  付添看護料

原告は前記入院期間中少なくとも二〇日間付添を要し、原告の妻に付添つてもらつたこと、右付添に要した費用としては少くとも一日一五〇〇円の割合による合計三万円を要したことが認められる。

(三)  少くとも通院費として四万円、文書費として五〇〇〇円を要したことが認められる。

(四)  逸失利益

原告は昭和一〇年八月六日生れの男子で事故当時被告日本生命に外務員として勤務し昭和四六年三月から同年五月まで三か月間の支給を受けた給与額は三〇万七七八三円、昭和四六年度の外交員報酬が一二一万〇九二三円(源泉徴収額を差引いたもの)であること、喪失期間は前記症状固定時昭和五三年五月より七年その新ホフマン式計算係数は五・八七四、労働喪失能力率四〇パーセントとするのが相当であつて、これによると逸失利益は五七三万七八五二円となりこの範囲で本件事故と相当因果関係のある損害と認める。

(30万7783×12/3+121万0923)×0.4×5.874=573万7852

(五)  慰藉料

前記原告の傷害の部位程度、治療状況、後遺症の内容程度及び原告が無償によるいわゆる好意同乗者であること(この事実は原告において明らかに争わないから自白したものとみなされる。なお、元来好意同乗者であつたことは同乗させた者側との関係で考慮すべきものであるが相手方車側から同乗車側に求償される場合を考えると相手方車側についても考慮するのが相当である。)その他諸搬の事情を総合すると慰藉料としては三〇〇万円をもつて相当と認める。

(六)  休業損害金(昭和四六年六月一五日から同五三年五月二〇日までの分一五六七万四一八五円)について既に受領済みであることは原告において自認するところであり本訴請求からは除外されており、逸失利益としての一時金、示談交渉等の交通費については原告本人尋問の結果中その主張に添う部分は直ちに採用することができず他にこれを認めるに足りる証拠はない。

(七)  原告が休業保障金とは別に、被告日本生命から損害賠償の内金として昭和四八年八月一七日に八〇万円、同四九年七月一七日に一三万二二五〇円を各受領していること(抗弁1(三)(四))は原告において明らかに争わないところであるから自白したものとみなす(なお、弁論の全趣旨によると抗弁1(一)(二)の給付金は原告の本訴請求以外の部分に充当されたもの(前記(六)項参照。)と認められる。)。

(八)  弁護士費用

本件事案の難易、前記各請求認容額、その他本件にあらわれた一切の事情を斟酌すると本件交通事故と相当因果関係のある損害として被告らに負担させるべき弁護士費用は八〇万円とするのが相当である。

四  結論

以上の事実によれば、本訴請求は損害賠償金八九二万九七〇二円及び内金二〇〇万円につき不法行為日の翌日である昭和四六年六月一六日から、内金八〇万円につき本判決言渡の翌日である昭和五五年八月二〇日から各支払ずみまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度において理由があるからこれを認容し、その余は失当であるから棄却し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法八九条、九二条本文、仮執行の宣言につき同法一九六条一項、仮執行逸脱の宣言につき同条三項を各適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 吉田秀文)

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